Top Message 2021

理事長メッセージ 2021

社会医療法人宏潤会 理事長 宇野 雄祐

変化に対して、そして
変化が起こる前から迅速に行動する
レジリエンスのある組織に。

社会医療法人宏潤会 理事長

Yusuke Uno宇野 雄祐

Message.01不確実な外部環境変化を前提に、
行動する。

 「ただでさえ先行き不透明といわれる時代に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが追い打ちをかけた」と、社会では認識されています。大同病院は、当初より地域の新型コロナウイルス感染者の方々を受け入れてきました。医療現場としての試練も経験し、その試練は未だ続いています。

 2021年は中期3カ年計画を刷新する年です。法人のVISIONである、「未来へのモデルとなる予防・医療・介護のネットワークを創る」ことを変更するつもりはありません。VISION達成ために、「高度急性期医療を追求すること」「最高の包括ケアネットワークを確立すること」の重要性も再認識しています。より良い地域医療のためには、この2つが必要だと、信念を持っているからです。

 新型コロナウイルス感染症のために、大きく変わったのは外部環境であり、今後も変化していくでしょう。コロナ後の疾病構造の変化、地域の方々の医療・介護に対する価値観の変化の影響が大きいと考えます。さらにこれらに対する地域医療の構造も変化していく可能性があります。

 冒頭で、「先行き不透明といわれる時代」というキーワードをあげました。不透明な時代というのは今だけでしょうか?私はそうは思っていません。試しに50~60年前の経営書を読んでください。1960年代の日本企業経営者も「今は不透明な時代だ。世の中の変化が激しい。変革が必要だ」と言っています。当時の新聞記事を読んでも、今日の記事かと見紛うほど同じ論調です。いつの時代も人が未来に対して感じることは同じです。

 確かに、長期的な外部環境変化を正確に予測することはできません。しかし、想定することはできます。日本や世界の歴史、医療業界以外の世の中の動きから、今後のシナリオを思い巡らすことができます。トップリーダーの役目は、20年、30年後の地域社会を見据え、複数のシナリオを想定し、準備を進めることです。

 どのシナリオが進もうとも、宏潤会の果たす使命は同じです。シナリオごとの課題解決の連鎖が異なるだけです。課題の連鎖の中に、コアな課題が潜んでいます。このコア課題を乗り越えることが、「変革へのLeverage(テコ)」です。コア課題、つまりLeverage Pointの見極めが重要です。

 いつの時代も人が感じることは同じ。ぼんやりしていると歴史は繰り返される。しかし、負の歴史は繰り返してはいけない。私たちの誰もが、未来の世代に大いなる責任を持っているからです。より良い地域の未来を創造する。これは宏潤会の責務です。

Message.02のバリューが共鳴し、
未来へ躍動する。

私たちの前に、新型コロナウイルス感染症という問題が突如現れました。多くの医療機関は前に進みたいと思いながらも、コロナへの対症に追われていると思います。一方で人口減少・少子高齢化は留まることなく進み、2025年は目の前、2040年問題と準備すべきことが山積しています。むしろコロナ前よりも、課題の壁は高くなっています。しかし私たちは、この壁を越え、突破しなければならない。

 高度急性期医療と地域包括ケアを併走し、「未来へのモデル」となる予防・医療・介護のネットワークを創る。言葉にすれば当たり前のように聞こえますが、法人のなかに介護事業所を設置するとか、地域の医療機関・介護事業者とより連携するという話ではありません。

 高度急性期医療の使命は治癒・ケアだけではありません。例えば大同病院を退院した患者さんがその後どのように生活を続けるのか、私たちの提供した医療が患者さんのQOLにどう長期的に役立ったのか、といった視点が大切です。これらの視点から得られるフィードバックを元に、私たち自身の医療パフォーマンスを上げていかなければなりません。

 「患者や家族の未来のために、これからの子供たちのために、地域の未来のために、私たちは何をしなければならないか?」この問いに明確に答えてこそ、「未来へのモデル」を実現できます。

 確かに、新型コロナウイルス感染症は危機です。しかし本当の危機は、地域の未来への視点を一時的にでも忘れてしまうことです。医療・介護は限られたエリアで価値を発揮します。危機の時こそ、一人ひとりの医療・介護従事者が、「地域を良くしていく」と決心し直す必要があります。

 私たちの法人では、各部門のリーダーたちに、法人のVISIONを理解してもらったうえでの3年後の自身や自部署のありたい姿と、そこへ向けての道筋を描いてもらっています。そして、自らを変えていく、自分たちから変えていく、課題を越えていくことに挑んでもらっています。

 Leverage Pointに気づいた人たちが怖れずに自ら前に進む。変革は、この行動から成し遂げられます。Leverage Pointをいち早く乗り越えるには、迅速な行動力が必要です。迅速な行動力というのは、世の中で使い古された言葉です。なぜか?多くの人は実行しないからです。迅速な行動力に憧れているだけで終わるからです。

 宏潤会には、本気で「迅速に行動する」意思があります。外部環境は大きく変わるだけでなく、速く変化するはずです。「迅速」に加えて「柔軟性」が求められます。私たちも組織構造を変え、柔軟性を高めることから実行しています。従来からこの法人には、急な変化への対応力があると感じています。いわゆる「レジリエンス」です。起こりうることを想定して、普段から標準化する努力やマニュアルを整備しておくことはもちろん大事です。一方で、レジリエンスとは、突発的なことに対し自然に心身が動いて迅速な対応ができる力のことです。そして何よりも大切なのは、物事は変化するものだという前提を持ち、あらかじめ準備する姿勢で臨むことです。

 どんな未来になるのか?を心配するのではなく、どのように良い未来を創るのか?を考え、前に進む。宏潤会の存在意義「その人の誕生前から最期まで、診療・ケアと安心を提供する」を全うしVISIONを達成するために、今後も邁進します。(2021年5月)

 

過去のメッセージはこちら(理事長メッセージ2019年4月)

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