Top Message 2023

理事長メッセージ

社会医療法人宏潤会 理事長 宇野 雄祐

まだ見ぬ次世代に
ギフトを渡すために。

社会医療法人宏潤会 理事長

Yusuke Uno宇野 雄祐

Message.01加速する超・少子高齢化に対応しうる
予防・医療・介護ネットワークを創る

 コロナ禍の3年間は、市民の方々も医療者も大変な思いをしました。さまざまな困難を乗り越え、ようやく2023年5月に、感染症法上2類相当から5類感染症となりました。確かに新型コロナウイルスが消えたわけではないので、今後も私たちの生活や医療に一定の影響はあるでしょう。しかし、今後別のパンデミックが起きたとしても、この3年間の経験と学びを糧に、私たちは新たな感染症を乗り越えられるはずです。

 新型コロナウイルス感染症が落ち着いても、世界にはさまざまな重要課題があります。気候変動、紛争・戦争、貧困問題、健康問題、人権問題。他にも多くの問題が残されています。これらの問題は一見、「地球・世界」「国家・民族」「人」に分けられますが、実際には複雑に絡み合っていて、解きほぐすには多くの壁を越える必要がありそうです。

 すべてが解決されるべき問題です。

 蔑ろにすると、その問題は未来の世代に先送りされます。

 未来の世代には、より多く、より高い壁が立ちはだかることになります。

 

 日本人の目の前にも、課題があります。人口構造変化への対応と南海トラフ地震への準備です。

 1つ目の課題である「人口構造変化」は、私たちがまさに直面していることです。85歳以上の人口は、2040年まで増加します。つまり要介護認定者が増え、医療と介護の複合ニーズが高まります。加えて、高齢者単身世帯や在宅診療数の増加が予想されています。外来患者数は全国的には減少傾向ですが、名古屋医療圏では2040年以降に最大となります。すでに社会保険料だけでは賄いきれていない社会保障給付費は、今後も増え続けます。

 日本の出生数は減少しています。新型コロナウイルスの影響によって、少子化はさらに前倒しになりました。今後の現役世代減少は、医療・介護業界はもとより、社会全体に大きな影響があります。国の少子化対策が奏効するのは、20年以上先になります。それまでは、今の現役世代が踏ん張らなければなりません。

 現役世代が減少する中で、企業における従業員離職も大きな問題です。離職理由には「健康がすぐれない」と答える人が一定程度存在しています。健康リスクによる労働損失は大きく、2030年にはGDPの約8%を占めるという試算もあります。現役世代のためにも、病気で働けない、亡くなる方を少しでも減らすことが必要です。

 これをダイレクトに実行できるのが、医療者です。

 社会医療法人宏潤会のVISIONは、「未来へのモデルとなる予防・医療・介護ネットワークを創る」です。そのために、

  • 高度急性期医療を追求する、
  • 最高の包括ケアネットワークを確立する、
  • 未来を担う現役世代を救ける、

 

 この3つの軸を磨き続けます。そうすれば、1つ目の課題を乗り切れる地域社会になると信じています。

 世間では、「日本の高齢化・少子化はずっと以前から分かっていたことだから、早くに対策をしていれば現在とは違う日本だったはず」という論調があります。

 本当にそうかもしれません。

 この瞬間を生きる者がこの瞬間のことだけを考え、まだ会えていない未来の世代のことを考えないのなら、その者は未来の世代から恨まれます。

 これから起こる2つ目の課題「南海トラフ地震」で、同じ轍を踏むわけにはいきません。VISION達成のためにも、自然災害は必ず乗り越えなければならないのです。

Message.02来るべき南海トラフ地震を
皆で乗り越えよう

 南海トラフ地震は高い確率で発生します。最大クラスの地震が発生した場合、対策を整備していたとしても死者数1,500人、重症者数1,400人、軽傷者数6,900人、と名古屋市は推定しています。建物被害は9,900棟です。

 大同病院は1939年に創立されました。しかし、太平洋戦争での名古屋空襲と伊勢湾台風により2度の消失を経験しています。その度に先人が再建を果たし、大同病院は現在の姿まで成長することができました。

 南海トラフ地震は、戦争と違って突然に一瞬に被災します。

 南海トラフ地震は、伊勢湾台風よりも広範囲が被災します。

 私たちの地域に救いの手は届かないかもしれません。

 大同病院は、宏潤会は、この地域は、先人たちのように再建することができるでしょうか?

 まだまだ準備が足りないと思います。準備にゴールはなく、被災の直前まで日々準備を重ね続け、最小被害を目指すことが重要です。

 いつの時代も、人間は先のことを予想も予言もできません。しかし想定することはできます。日本の2つの課題は、確実に想定できることです。ならば、今後のシナリオを思い巡らすことができます。20年、30年後の地域社会を見据え、複数のシナリオを想定し、準備を進めることはできます。

 私たちが、未来の世代にギフトを渡すのです。

 社会医療法人宏潤会のMISSIONは、「その人の誕生前から最期まで診療・ケアと安心を提供する」です。「その人」は目の前の人だけのことではなく、「まだ会ったことのない未来の人」も含んでいるのです。

 「患者や家族の未来のために、これからの子供たちのために、地域の未来のために、私たちは何をしなければならないか?」この問いに明確に答えてこそ、「未来へのモデル」を実現できます。

 2つの課題は、宏潤会だけで立ち向かえるものではありません。しかし、地域の医療機関・介護施設、あらゆるステークホルダーとネットワークを創ることができれば、未来へのギフトが生まれるはずです。

 今後も地域社会の方々と一緒に課題を乗り越え、社会を前進させていくことを願います。(2023年5月)

 

2021年5月のメッセージはこちら

 

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